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第08回 門司・下関】

 第8回目の「九州周遊建築散歩」は、レトロな建物が建ち並ぶ門司と下関を散策します。
 門司や下関には、明治、大正、昭和初期にかけて国際貿易港として栄えた当時の建物が多く残っていますが、それらの建物はまちづくりの重要な資源として再活用されています。
 今回は、今年の締めとして明治期の建築を中心に探索したいと思います。散歩のつもりで気楽に参加してみませんか?

(ポスターより抜粋:ポスターはこちらから


 

 12月14日、門司港駅11時に集合。この日は学部の3年生も声をかけたので、大勢になる可能性があると思いながら待っていました。・・・しかし、結局3年生は姿を見せず、今回の建築散歩は5名でスタートします。

 まず、門司港駅を散策。1914年に建設された門司港駅は日本でも最も古い駅の1つであり、唯一国の重要文化財になっています。普段利用してもレトロな雰囲気を味わうことが出来ますが、建設当時から使われている「幸運の手水鉢」や2階にある資料室を見学しました。


門司港駅正面

 次に、門司港駅を出てすぐ右にある旧JR九州第一庁舎(松田軍平)の前を通りながら、今日の昼食の場所探しも兼ねて門司港ホテルに向かいます。このホテルはイタリアの著名な建築家、アルド・ロッシの設計です(といっても私はいまいち好きにはなれませんが)。そこで、適当なところで北九州名物?の焼きカレーを食べ、旧門司三井倶楽部に移動します。

 こちらは1921年に三井物産の社交倶楽部として門司区谷町に建築され、平成2年解体、平成3年にJR門司港駅前に移築・復元後、平成7年に開館した。JR門司港駅と同じく国の重要文化財になっています。1階にはレストランが、2階の展示コーナーでは北九州出身の作家・林芙美子資料室やアインシュタインメモリアルルームが見学できます。レストランには入れませんでしたが、1階及び2階の展示コーナーの見学をしました。ちなみに設計者は松田昌平で旧JR九州第一庁舎を設計した松田軍平のお兄さんです。


  旧門司三井倶楽部            内部(アインシュタインの間)

 その後、旧大阪商船ビル(1917年)に移動。二階は「海」「港」「船」をテーマにした海事資料室では船の模型などの展示を見学。この後子供を含め4名が合流。

 ここから怒涛の建築見学が始まりました。山口銀行門司支店(旧横浜正金銀行門司支店:桜井小太郎:1934年)、ドコモ・センツウ(旧日本船舶通信ビル:1950年)、大分銀行門司支店(旧二十三銀行の門司支店:1922年)、明治屋門司出張所(曽弥達蔵:1909年)、福岡中央銀行門司支店(旧藤本銀行門司支店:1924年)、等などを見ながらNTT門司営業所に到着。


  山口銀行門司支店                 ドコモ・センツウ  


     明治屋                福岡中央銀行門司支店

 この建物は、京都タワーホテルや八幡にある九州厚生年金病院を設計した山田守の逓信省時代の作品です。山田守は戦後、建築の流れの1つを作った分離派のメンバーでもあり、日本を代表する建築家です(京都タワーホテルの賛否はともかく、デザインの斬新さと丁寧さが随所に見られるので、私が好きな建築家の1人です)。ここでは、1階の門司電気通信レトロ館で、大正・昭和の電信・電話の展示を見学しました。


      NTT門司営業所         レトロな電話ボックス

 その後、旧門司税関(1912年)の中のギャラリー?やブルーウイング門司(跳ね橋)を通って、次の目的地(実はこれからが本番)である下関行きの船に乗るため、船着場へと向かいます。この頃から雨がぱらぱらと降り出し、どんどん寒くなってきました。

 船は下関水族館海響館のすぐ横に到着。先ず、新しくなった唐戸市場に向かいます。唐戸市場は昭和8年の開業以来の歴史を持つ、業者相手の卸売機能と一般消費者向けの小売機能が共存しています。この建物は池原義郎の設計で2001年に竣工され、特に天井面のプレストレストコンクリートは美しく、この作品を象徴しています。また、屋上のテンション材が突き出ている芝生の広場も晴れた日は気持ちがよさそうで、池原先生(私が大学にいた頃に授業に出たことがあります)の作品の中でも好きな作品です。


唐戸市場内部                同屋上    

 次にこの日一番楽しみにしていた旧秋田商会ビル(秋田寅之助?:1915年)に向かいます。コーナーに半球ドームの塔があるこの建物は、下関を代表する海運会社、秋田商会の事務所兼住宅として建てられたものです。また、もうひとつの特徴として屋上庭園が設置されていますが、世界的に見てもかなり早い時期の例だと考えられます。1階は洋風の事務所、2・3階は一転して書院造の本格的な和風の設えになっています。屋上には螺旋階段で上がれ、塔屋は市松模様のタイル張りの床に花をあしらったタイルが散りばめられています。屋上庭園には本格的な和風の庭園を見ることが出来ます(残念ながら立ち入り禁止でした)。現在は、下関の観光情報センターとして利用されています。この建物だけでも下関に来て建築散歩をしてよかったと思いました。


    旧秋田商会ビル           螺旋階段

 雨も強くなってきましたが、この後ロダン美容室(旧ウール商会:1907年)、旧下関郵便電信局電話課(1923年)を駆け足で回って、旧下関英国領事館(ウィリアム・コーワン:1906年)でお茶を一服するために向かいます。しかし、子供はダメと言われ、またもや断念。仕方がないので見学だけ行います。この建物は日本で3番目に設置された英国領事館で、現存する英国領事館としては世界で最古の建物のため国の重要文化財に指定されています。

 その後、関門トンネルに向かい、徒歩で関門海峡を横断。その後小倉へのみに向かうことになったのですが、この辺でレポートは終わります。冷たい雨の中、皆様ご苦労様でした。

(つつみ)


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