残響下のスピーチ


残響下のスピーチ(健聴者の場合)


残響の影響は、時に雑音の影響と比較される。大きな講堂やコンサートホールでは、第1反射音は、明らかに時間的に分離される。ただしこれは、物理的にそうなのであって、感覚的には必ずしもそうではない。第1反射音の時間分布、相対的な強さ到達時の入射角度は、ホールの音響の主観的評価を左右するとされてきた。教室や居間のような小さい部屋では、反射音は次々と遠い速度で耳に達し重複しあう。 このような状態では、第1反射音の時間的分布が、語音弁別を左右することは少ないとされている。

残響によって子音の識別が低下するメカニズムは、マスキングノイズによる場合よりも複雑である。 語頭子音への残響によるマスキング効果はなく、母音に続く子音にかなりの影響があると思われる。 この影響は、母音によって異なるであろう。 なぜなら母音により、ホルマントのエネルギー集約度が異なるからである。 ホルマントを延長すると、そのホルマント周波数におけるマスキングが増すと考えられる。

(1)SN=+5dB、残響なし
(2)雑音なし、残響なし
(3)雑音なし、T=1.2s

以上の条件で予備検査の結果を図に示した。
これをみると、雑音下では子音が語頭にある方が語尾にある場合よりも識別率が高い。 残響下では得点は母音によって異なり、母音が/a/の場合には語頭がよいが、/i/の場合には語尾の子音の識別率の方が高かった。 子音が詔頭にある場合と語尾にある場合とでは、誤りのパタンが大きく異なること、雑音と残響では、誤りパタンの差違は少ないことがいえるようである。


予備検査の結果

[聴覚のマスキング] [残響下のスピーチ] [SN比]