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3.3 透過損失の測定方法

(1)透過損失の測定
壁体その他の透過損失の測定は、図3.08の測定用残響室の音源室の間の開口に試料を取り付け、定常状態において両室内の音圧レベルを測定して、式3.31を用いて計算する。

            (3.31)

ここで注意すべき点を列挙すると(Iso 140)
1)両室とも音のエネルギーが完全に拡散し、一様な分布をせねばならない。そのためには室容積50m3以上で不整形をした残響室を用いるか、直方体の場合は両室のノーマルモードが一致しないよう大きさを少なくとも10%変化させ縮退を生じない寸法比をとる。その上拡散手段を講じることが望ましい。
2)測定値が残響時間によって変わらないようにするため、特に低音域で残響時間が2秒以上にならぬよう調整する。
3)試料面積は壁約10m2、床10ー20m2で、一辺2.3m以上必要であり、できる限り実際の構造に等しく造りつける。
4)試料透過以外の径路による音の伝達は、無視できるほど小さくなければならない。
5)音源はバンドノイズで、両室とも多数点で100ー4000Hzの1/3オクターブバンドの音圧レベルを測定し、エネルギー平均を求めてL1、L2とする。
6)吸音力A2は残響時間測定値から求める。
以上の諸条件を満足する際小規模の測定室は図3.08になる。


(2)現場の遮音測定
実際の建物で空気音に対する遮音能力を測定する場合は、音の伝達径路が間仕切壁以外に図3.09のように周壁の固体音を含むバイパス(flanking)がある。実験室と同じ測定をしてもそれは見掛けの透過損失としてTL'で表す。

            (3.32)

この値は実験室の測定値と比較するのに用いられる。
現場の2室間の遮音評価には、両室間のレベル差、式3.33を用いる。
            (3.33)

しかし受音レベルL2は吸音力A2に反比例するから、欧米では受音質吸音力を10mで標準化した上で評価する。
            (3.34)

または受音質の実測残響時間T秒を、典型的な居室の0.5秒で規準化し、
            (3.35)

このDn,0.5はISOの規格とされ”標準レベル差”とよぶ。
わが国では居住者の体験する実態を重視し、式(3.33)レベル差Dを用いる評価法が規格化されている。(JIS 1417)。


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