二重(多重)壁の音響透過損失

距離dをおいて2枚の薄壁が平行に置かれた場合、垂直入射音に対する遮音性を考える。図3.06のように中空層では入射方向の音波と逆方向の音波をも考えねばならないから、壁Tに対してはその両側の圧力差による運動の式と粒子速度の連続条件から

            (3.17)

壁Uに対しては、距離dによる音波の位相差を考慮して

            (3.18)

となる。ただし、k=ω/c=2π/λ、ZW1、ZW2はそれぞれ壁T、Uの単位面積当りのインピーダンスである。
式3.17−3.18から
            (3.19)

が得られる。ここで簡単のため壁T、Uが同じ単位面積当り質量mをもつ場合を考えると、そのインピーダンスは
            (3.20)

これを式3.19に代入し、この2重壁の透過損失は、
            (3.21)

となる。ここでd=0の場合は
            (3.22)

となって単層壁に対する式のmを2倍にしたものと同じになる。また
            (3.23)

が0のときTL02=0、となって遮音性を失う。その条件は低音域で波長λが中空層dより充分大きいとき、kdは小さくなるから
            (3.24)

となって周波数frmのときに音は透過することになる。
これは2つのmという質量の間に、空気層というバネが挿入されたと考えた機械的振動の共振周波数である。これをまた等価回路に表すと、LとCの共振回路になる。この共振周波数は低音域で波長が、dに比べて充分大きい範囲であるが、高音域においても、式3.23が0となるとき、すなわち
            (3.25)

を満足する周波数でTL02=0となる。この周波数frdを解析的に求めることは困難であるが、図式解または数値解により求めることができる。 また一方
            (3.26)

のとき
            (3.27)

となって、TL02は極大値となる。この周波数は
            (3.28)

となり、そのとき式3.21は
            (3.29)

となるから、図3.07のようにTL0の曲線は多くの山谷をもつことになる。図の曲線Cはfrmとfrdの中間において等価回路から誘導された近似式
            (3.30)

を示す。ただし、TL01は1重のみの透過損失である。

サンドイッチパネル
2重壁を応用して、空気層のかわりに異なる材料をはさんだものとしてサンドイッチパネルを考えることができる。これは表面材と芯材の組合せによって、遮音性のみでなく断熱性その他種々の要求をプレハブ化によって満たそうとするものである。理論的には空気層のバネのかわりに、芯材がバネあるいは抵抗として働くと考えて、等価回路の解析が行われている。その芯材の性質によって、グラスファイバーのような抵抗として働く材料では、中空の場合より遮音性が改善されるが、スポンジやプラスチック発泡体のような弾性体の場合は、TLの周波数特性の凹凸が生じ、かえって、遮音性が低下することがあるから、実測して確かめる必要がある。


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