3.2.2 コインシデンス効果


コインシデンス効果が生じるとき、音の入射波の板に平行な成分と板の屈曲波の位相が一致し共振状態と同様の状態となり、透過損失が低下する。


図3.04のように入射角θで波長λの平面波が壁体の入射すると、壁面上では、
            (3.12)

を波長とする音圧の強弱の縞目が壁面に沿って移動するから、壁体は屈曲振動を強制されその屈曲波(曲げ波 bending wave)が壁体を伝搬することになる。
一方、厚さhの平面板の屈曲波の伝搬速度は、棒の曲げ振動の理論から導かれ、密度ρ、ヤング率E、ポアソン比σとして
            (3.13)

となって図3.05に示すように周波数fとともに増加する。そして、空気中の音速cに対して、
            (3.14)

となる周波数で式3.12の条件が満足され、壁体の屈曲波の振幅は入射する音波の振幅と同じくらいに激しく振動して、遮音性能が著しく低下する。その周波数を一致周波数(coincidence frequency)といい、このような現象を共振と区別してコインシデンス効果とよんでいる。そしてコインシデンス周波数は式(3.13)、(3.14)から、
            (3.15)

となり、その最低周波数はθ=90°のとき、
            (3.16)

ただしσ=0.3。ここで、csは固体中の音速。
このfcを限界周波数(critical frequency)といい、これより低い周波数では、cB<cとなってコインシデンス効果は生じないが、fcより高い周波数では、適当なθに対して必ずコインシデンスを生じる。


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