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研究テーマ・受賞・研究室行事

Research Themes 研究テーマ

上野研究室では、持続建築エネルギー学を専門として以下のような研究を行っています。

建築分野における省エネ・脱炭素の実現には、設計段階における設備機器の高効率化だけでなく、運用段階におけるエネルギー性能の最適化が不可欠です。本研究では共同研究先等の実建築物を対象に、コミッショニング(Cx)およびファインチューニング(Ft)を行います。

Cxは、設計段階で施主の希望を定量的な性能として明確化し、目標が実現できるよう設計に落とし込み、さらに機能性能試験によって検証するプロセスのことで、新築だけでなく既存建物の改修等にも適用可能です。またFtは、建築物の運用開始後に蓄積される実測データを基に、制御設定や運転条件を微調整し、エネルギー効率と快適性のさらなる向上を図る手法です。本研究ではこれらの手法を活用し、設計から運用まで含めた建築物の環境性能を向上させます。

研究紹介図:設計から運用まで建物を調律し、省エネ性能を伸ばし続けるCx・Ftの流れ

再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、建築単体ではなく地域単位でのエネルギー最適化が重要となっています。本研究では、島嶼部や地区スケールを対象としたゼロ・エネルギー・アイランド(ZEI)およびゼロ・エネルギー・コミュニティ(ZEC)の実現に向けたロードマップを設計します。ZEI・ZECの実現には、太陽光発電や蓄電池などのハード技術だけでなく、需要側のエネルギーマネジメントや住民行動の変容を含めた統合的な設計が必要です。

本研究では地域特性(人口構成、建物用途、気候条件)を踏まえたエネルギー需給モデルを構築します。さらに導入初期から中長期にわたる段階的な技術導入シナリオを設定し、コスト、CO₂削減量、レジリエンスの観点からシナリオを比較・評価します。これにより、現実的で実装可能性の高い地域脱炭素戦略をロードマップとして設計します。

研究紹介図:島や地区がエネルギー自給(使う=つくる)に至る段階的なロードマップ

日本に数多く存在する中小規模の既存建築物の省エネ化には、大規模改修を伴わない外付け型EMS(エネルギー・マネジメント・システム)の開発が求められています。本研究では、IoTセンサとAIカメラを活用し、柔軟なEMS構築を目指します。IoTセンサで温熱環境や設備稼働を把握し、AIカメラで人の在・不在や行動パターンを推定します。これにより詳細な空間情報を分単位で取得します。

またナッジ理論を応用し、利用者の行動変容を促す情報提示手法を検討します。エネルギー使用状況を可視化することで、過度な負担なく省エネ行動を誘導します。これらの技術を組み合わせることで、低コストで拡張性の高いEMSを実現し、オフィス、教育施設、公共建築など多様な用途でも空調や照明の制御を改善させ、快適性を維持した省エネを実現します。

研究紹介図:IoTセンサとAIカメラの情報を外付けEMSが受け取り、空調・照明の調整やナッジにつなげる構成

建築空間の環境性能は、居住者の快適性や健康、生産性に大きく影響します。特に熱環境評価は重要な課題です。本研究では、温度、湿度、放射、気流を総合的に捉えた建築空間の環境評価を行います。特に近年注目されているバイオフィリックデザイン空間に着目し、植物が室内の温熱環境や熱的快適性に及ぼす影響を評価します。具体的には、実測調査やシミュレーションを通じて、植栽が空間の熱環境にどのような影響を与えるかを解析します。

測定実験や実測調査に基づいた解析を数値シミュレーションに組み込むことで、建築空間内の熱・水分挙動を詳細に再現します。これにより、設計段階で温熱環境データに基づくパラメトリックデザインを実現します。本研究を通じて、エネルギー消費の削減と快適性の向上を両立する建築空間設計手法を提示するとともに、バイオフィリックデザインや調湿性能を活かした次世代建築環境評価の基盤構築を目指します。

研究紹介図:植物のある空間の熱環境を実測とシミュレーションで評価し、快適で省エネな設計につなげる流れ

都市のヒートアイランド現象は、地表面被覆の変化や建物の高密度化に加え、空調設備等からの人工排熱が複合的に影響することで顕在化し、熱中症リスクの増大やエネルギー需要の増加など、様々な社会問題を引き起こしています。一因である空調設備からの人工排熱は、建物用途、運用状況、時間帯によって変動し、都市空間内で不均一に分布します。本研究では、運転データとエネルギー消費量から人工排熱量を推定し、その時空間分布を定量的に解析します。

解析は街区から都市までのスケールで行い、人工排熱が屋外熱環境と局所的な気温上昇に及ぼす影響を明らかにすることで、昼夜・季節ごとの影響やピーク時の熱環境悪化を把握します。また分析結果を基に、空調排熱の低減・分散・利用といった緩和策と、ヒートアイランド進行を前提として熱環境悪化を抑制する適応策を検討します。都市環境工学と都市計画を統合することで、建物配置、外部空間設計、都市緑化といったヒートアイランド対策の立案に貢献し、脱炭素化と都市の熱環境改善を同時に達成するための科学的根拠を提供します。

研究紹介図:エアコン排熱で街が暑くなる課題を、排熱の地図化で分析し、緩和策と適応策につなげる流れ

持続可能な社会の実現に向け、不動産市場においても脱炭素化への要請が急速に高まっており、投資判断におけるESG(環境・社会・ガバナンス)評価の重要性が増しています。本研究では、環境性能に優れた「グリーンビルディング」が、企業のESGスコアや不動産の資産価値に与える影響のメカニズムを解明します。具体的には、環境対応がもたらすランニングコスト削減効果に加えて、NOI(純営業利益)の改善効果や、市場の上乗せ価値である「グリーンプレミアム」の追加効果などを定量評価します。

しかし、価値の波及範囲が広がるほど、同一の省エネ効果を重複してカウントしてしまうリスクも顕在化します。例えば、炭素クレジット等の制度的価値と、金融的なESG評価において、同一の環境改善効果が別の評価主体によって二重に評価された場合、省エネ改修の付加価値を単純合計すると市場価値を過大評価する恐れがあります。そこで本研究では、環境性能がもたらす多様な価値上昇効果を適切に分離・評価する手法を提示します。これにより、環境配慮型建築の普及に努める事業者へ適切な資金が循環する市場環境を促すとともに、事業者がグリーンビルディング実現に挑戦するインセンティブを可視化することで、経済合理性と脱炭素化が両立するサステナブルな社会構築に寄与します。

研究紹介図:従来の二重カウントによる過大評価と、価値を分けて正しく測る本研究の対比

建築における「デザイン(意匠)」と「テクノロジー(設備)」は、しばしば独立した要素として扱われがちですが、歴史的には互いに制約を与え、かつ可能性を広げ合う密接な関係にありました。本研究では、建築環境史の視点に立ち、近代から現代に至る環境・設備工学と空間デザインが、建築という生態圏の中でどのように共進化してきたのかを調査分析します。例えば、空調システムの登場がガラス張りの摩天楼を生み出し、逆に国家的建築に挑む建築家の後押しが新たな環境制御技術の発展を促したといった、技術と美学の相互作用を紐解きます。

分析にあたっては、先人たちが積み上げてきた建築環境・設備工学の歩みを、意匠を含む建築全体や社会の文脈まで俯瞰して捉えていきます。各時代において当時の設計者たちが何をコンセプトに設備や空間をデザインしてきたのかを深く読み解くことで、現代における最新技術や解決すべき課題を、単なる「点」ではなく「過去と地続きの線」として構造的に考察していきます。これらの歴史的系譜を辿るアプローチによって、未来の建築設備設計を創造していくための手がかりを探ります。

研究紹介図:近代から現代への年表上で、設備技術と空間デザインが互いに進化を後押ししてきた関係

水資源が豊富と言われている日本においても、老朽化した上下水道の更新費用の増大や、都市部の限られた地下空間における既存インフラの容量逼迫といった課題が顕在化しています。建築のサステナビリティやレジリエンスの強化も求められる中、外部インフラに依存せず自立的に水収支を調和させた建物であるZWB(ゼロ・ウォーター・ビル)のニーズは高まっていくと考えられます。また地球温暖化やヒートアイランド現象の進行に伴い、利用者の熱中症リスク軽減や満足度向上の観点から、上水の飲料水としての価値が再評価されています。したがって、利用者が水を豊かに活用して快適性を高める「ウェルネスの向上」も「水収支の調和」と同様に重要で、双方を高い次元で両立することが今後求められていくと考えられます。

そこで本研究では、実在する建築物を対象とした実測調査やケーススタディを通じて水利用の実態データを収集し、気候条件や建物用途に応じた最適な水バランスを導き出す「水収支シミュレーションモデル」を開発します。環境負荷を最小限に抑えつつ、利用者の満足度を最大化する水環境デザイン(高度な水質制御や水利用を促すデザインなど)を定量的に評価し、実務において実装可能性の高い水循環設計手法を構築します。本研究を通じて、従来の「節水一辺倒」の考え方とは異なる、環境負荷の低減と人間の豊かな生活を同時に実現させる、新しい水利用のあり方の提示を目指します。

研究紹介図:節水一辺倒の従来と対比し、水を循環させて入る水と出る水のバランスをとりながら豊かに使う本研究

Prize 受賞

氏名 受賞内容
上野貴広 2023年度 一般財団法人省エネルギーセンター 省エネ大賞 省エネ事例部門 省エネルギーセンター会長賞
上野貴広 2022年 日本建築学会奨励賞
上野貴広 16th International Conference of Asia Institute of Urban Environment Best Presenter Award
上野貴広 2017年度 公益社団法人空気調和・衛生工学会九州支部 支部長最優秀賞(学術研究部門)
上野貴広 平成28年度 エネルギー研究教育機構 若手研究者・博士課程学生支援プログラム受賞

Lab. Events 研究室行事

行事
4月 研究室配属Laboratory assignment
5月 空気調和・衛生工学会九州支部講演会Special lecture of SHASE Kyushu branch
6月 暑気払いBeat the heat
7月 大学院推薦入試/ゼミ旅行Graduate school entrance exam / Seminar trip
8月 夏期大学院入試Summer graduate school entrance exam
9月 建築学会全国大会・空気調和衛生工学会全国大会Annual conference of AIJ, SHASE
10月 九州大学・香川大学・久留米工業大学等との合同ゼミ合宿Joint seminar camp
11月 学部3年生仮配属Provisional assignment
12月 卒業論文発表会/忘年会Graduation Thesis Presentation / Year-end Party
1月 卒業設計審査会Graduation Design Review
2月 修士論文審査会Master Thesis defense
3月 建築学会九州支部研究発表会/追いコンAIJ Kyushu branch conference / Graduation Party

ゼミ予定:全体ゼミ(週1回)、チームゼミ(週1回)、朝ゼミ(週3回)