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5.2 室形状による固有周波数分布

固有周波数を求める式
を計算すると( nx, ny, nz)の異なる組合わせによって同じ周波数となることがある。このとき固有振動が縮退しているという。
これは右図の周波数空間において、幾つかの格子点が存在する場合である。
縮退を生じることは固有振動の分布のむらが大きくなり、室内音響として好ましくない現象であが、これには部屋の寸法比が関係してくる。例えば、寸法比が1:1:1、および1/√2:1:√2の場合の2つの室について、固有周波数を計算したのが下図である。1:1:1の室は著しく縮退を生じている。
一般に室の奥行、幅、高さの比として、1:2:4:のような簡単な倍数比は縮退が著しくなるので避けねばならない。
以上は、形状が単純な矩型の室に限った記述である。しかし一般の室では壁面に凹凸があったり、平面形状や断面形状などが扇形、台形となることも多い。こうした形状の室の固有振動数などの音場の詳細に関する検討は、前述のように有限要素法や境界要素法などの数値解析方法による必要がある。
またここまでの説明において波動方程式は全て外力項のない「斉次波動方程式」であった。これに対し建築環境では、音源から音が放射され音場が形成されるのが通常であり、外力項や吸音減衰を含む「非斉次波動方程式」を取り扱う必要がある。しかし非斉次波動方程式は斉次波動方程式の解を用いることで解くことが可能なため、以上の説明はその基礎として重要である。