遮音塀が存在する場合の伝播
 音・光・電磁波などの波動は、基本的に直進するが、障壁がある場合に 回折現象が生じて障壁の裏側に回り込む性質を有する。波動の波長が短い 光は直進性が強く、回折は僅かで、図−1(a)のように障壁の裏側は ほとんど光の到達しない影になる。逆に波長の長い音は、回折して図−1(b)の ように障壁の裏側にも音が到達する。しかし障壁のない場合の直接音のエネルギーに 比較すると、回折音のエネルギーは小さな値となる。すなわち障壁が存在することに より受音点のレベルは低下することになる。この原理に基づいて騒音低下を目指した ものが遮音塀(防音壁)である。道路に設置された遮音塀の例を写真ー1、2に示す。

図−1

国道3号線に設置された遮音塀の例(写真) 見通しのきく遮音塀の例(写真)



 前川氏の実験的研究によると、自由音場に点音源と半無限長の障壁がある場合、障壁によ る減衰値ΔSPL(障壁が存在しない場合の音圧レベルと障壁が存在する場合の 音圧レベルの差)は図−2のようになる。回折音の行路(図中のA+B)と直接音の 行路(図中のd)の差をδ、波長をλとして N = 2δ/λと置くと、この減衰値はほぼ

    ΔSPL =10log10{0.2+N}+12.5 (dB)

で近似できる。この式より行路差が大きい(障壁が高い)ほど、また波長が短 い(周波数が高い)ほど、障壁による効果が大きいことが分かる。なお障壁が 反射性の面上にあるときには、回折音の反射成分も加味する必要がある。
 ここで音源のパワーレベルを PWL とすると、受音点の音圧レベルSPL(dB) は、

    SPL = PWL -11- 20log10d - ΔSPL (dB)

となる。


図−2 Nと遮音値の関係
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UP DATE 3/14/1997

久留米工業大学工学部建築設備工学科
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