2.3.3特殊吸音構造

1)可変型吸音構造
室の使用目的によって残響時間を変えたいという要求は当然のことであり、壁面や天井面の吸音率を変えようという試みは、古くからいろいろ工夫がなされているが、低音域の反射特性に難のあるものが多い。またその機構の複雑なものはとうてい維持ができず、適切な運用のできる技術者も少ない。よく活用されているのはカーテンの開閉と図2.06のような可動パネルなどで放送スタジオ・試聴室など特殊な室で用いられている。

2)懸垂吸音材
工場その他において騒音対策上、特に吸音力が必要であるのに、配管やダクト、あるいは採光のために天井面や壁面を吸音処理しにくい場合には、図2.07のような吸音体を多数天井から吊るすのがよい。音波の回折により、見掛けの吸音率が1以上となることがある。また穿孔板や金網の皿(直径60ー200cm程度)に多孔質材を乗せて多数天井に吊るすもの、また深い格天井の格子の形に多孔質材を吊るしたものなどがある。

3)吸音楔と無響室
室の周壁を完全吸音に仕上げて自由空間と同等の音場を得ることは、研究上重要な手段である。これを無響室(anechoic room)というが、このための吸音構造は多孔質材料でつくった吸音楔が賞用されている。その最も経済的な設計法が、図2.08である(前川 1981)。(a)のような形の寸法および吸音材(グラスウール)の流れ抵抗を(b)のグラフを満足するように選べば、縦軸に示す周波数より高い周波数範囲で、高圧反射係数が0.15以下(吸音率98%以上)となる。
もし300Hzのグラスウールの層で充分実用になる無響室ができる。


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