2.3.1設計施工法
吸音材料の性能を効率よく発揮させるには、その吸音機構と吸音特性を正しく理解し、目的に応じて正しい設計をすると同時に、その設計を忠実に施工する必要があるので、現場における管理が特に重要である。
- 1)材料の選びかた
- 実際に用いる吸音材料のデータは残響吸音率であるが、その施工詳細によって大きく変化するから、その構造詳細を明示した実測値でなければ、そのデータは使えないことに注意して市販品を選ぶべきである。最近の実測データはハンドブックやパンフレットとして刊行されている。またJIS規格の制定も進められている。
- 2)面積効果の利用
- 広い面積に集中せず、小さな面積に分割してパッチするほうが、総吸音力の増加とともに反射音の拡散に非常に有効である。
- 3)吸音する部位の選択
- 同じ材料でも、音圧の大きいところに置くほど吸音力が大きくなるから、室の隅角部、天井の周辺などを吸音材で仕上げるのが有利である。
- 4)取り付け方法の注意
- ・多孔質型
- 背後の空気層をできるだけ大きくとるのが有利である。たとえば吸音ボードは板振動ができて低音域の吸音が増加し、木毛セメント板は、貫通したすき間が穿孔板として働き、空気層との共鳴によって中音域の吸音率が高くなる。これに反して、木毛セメント板をコンクリートに打ち込むと、すき間が埋まって吸音力が低下する。
- ・板(膜)振動型
- 板振動をしやすいように張ることが必要である。野緑の間隔や針の数に変化をもたせて、共振周波数を分散させるのがよい。
- ・穿孔板
- 多孔質材の被覆の場合は、開孔率20%以上できるだけ大きく、板厚の薄いものを用いる。共鳴器型の場合は孔のあけ方、板厚・空気層など、すべて計算どおりに正しく施工せねばならない。そのときに使用する多孔質材は、孔の部分の抵抗となるよう、板から離れないほうが有効である。
- 5)塗装仕上げなど
- 各材料および構造の吸音機構を殺さないように注意する。すなわち板(膜)振動型では自由だが、多孔質型および共鳴器型では、表面の多孔性や開孔をふさぐような塗装紙張りなどがいけないことは明らかである。布張りも流れ抵抗が大きければ、特性に大きく変化を与える。特にクラフト紙を裏張りしたクロスは、ほとんど通気性がないので用いることはできない。
- 穿孔板は孔から塵埃が出入りしたり、そのため孔の部分に布などがあると異常に汚れたりするので意匠上の問題になる。このとき、下地の野緑に薄いポリエチレンの膜を張ってから穿孔板を取り付ければ、吸音性を害することが少なく、汚れもかなり防ぎうるといわれている。これは空気の直流を阻止しながら音波の交流に対して抵抗とならむような工夫である。
戻る